Thursday, September 12, 2024 7:05 AM

メルセデスとファクトリアル、全固体電池開発で提携

 メルセデス・ベンツと新興電池メーカーのファクトリアル(Factorial、マサチューセッツ州)は10日、EVの航続距離を飛躍的に延ばす全固体電池の共同開発に取り組み、2020年代末までの量産開始を目指していることを明らかにした。

 ロイターによると、開発中の新しい電池は「ソルスティス(Solstice)」と呼ばれ、1キログラム当たり450ワット時(Wh/kg)の重量エネルギー密度を持ち、EVの航続距離を現在の平均より約80%延ばせる見込み。

 全固体電池は、出火リスクを低減し、航続距離が長く軽量で、EVの低コスト化を可能にする画期的な技術と期待されているが、大手自動車メーカーや電池製造パートナーにとって、大規模な開発は予想以上に難しいことが判明している。

 ファクトリアルはすでに準固体電池を開発し、メルセデスを含む自動車メーカーが試験を行っており、26年には各社のEVに搭載される予定だ。ファクトリアルのシユ・フアンCEOによると、同社が準固体電池を開発した理由は、従来のリチウムイオン電池と同じような生産ラインが使えて、より早く規模を拡大できるからだという。

 全固体電池は、イオンを通す電解質を液体から固体に置き換えるため出火のリスクが減り、電池パックの小型化も可能になる。また、現在の電池パックに必要な高価で重い冷却システムが不要なため、自動車メーカーはコストを大きく減らせる。ただし、固体電池には寒冷な環境での性能の低さや電池パックの膨張傾向といった課題がある。

 メルセデスによると、ファクトリアルの全固体電池は現在メルセデスが使っている高性能電池よりもエネルギー密度を40%高められる。このため、EVの電池パックを大幅に小さくしたり、消費者の要望に応じて長距離走行が可能なEVを提供したりできるようになる。さらに、電池の軽量化によってEVのボディー素材にスチールが使えるようになり、高価で二酸化炭素(CO2)炭素の排出量も多い高強度アルミニウムを使わずに済む。

 ファクトリアルは22年に2億ドルの資金を調達しており、メルセデスは同業のステランティスや現代(ヒョンデ)とともに同社に出資している。