Thursday, March 16, 2017 10:08 AM

海運業界、再び風力に注目〜マースクがローター船を実験

 100年以上前に帆船の使用をやめた海運業界が、再び風力の活用を目指している。

 ウォールストリート・ジャーナルによると、デンマークの不定期船会社マースク・タンカーズ(Maersk Tankers)は、高さ100mほどの縦型円筒(ローター)が回転することで船が進む技術の実験を、同社のタンカー1隻を使って始める。うまくいけば40隻以上ある他のタンカーにも導入する可能性がある。

 海運業界の風力活用に向けた取り組みは、これまでは技術的にコストがかかりすぎたり、思うようなテスト結果がでなかったりで広がらなかったが、マースクのローターは軽量で比較的安いため、期待が高まっている。

 ローターにはフィンランドのノースパワー(Norsepower)が開発した軽量複合材が使われ、船体への設置コストは100万〜200万ユーロ。回転する物に風が当たると、風が分かれた両側の気圧が違うことで気圧の低い方に物が動くという「マグナス効果」によって船が進む原理で、ローター自体はすでにオランダの船会社ボーレ(Bore)が運航するフェリーで使われており、フィンランドのバイキング・ラインのクルーズ船にも設置される予定だ。

 マースクの実験は、ノースパワー、ロイヤル・ダッチ・シェル、英エネルギー技術研究所(ETI)との合弁事業。2014年にローターを採用したボーレによると結果は予想以上で、同社は「良い風が吹けば燃料を6%節約でき、重要なコスト削減策となる。帆(ローター)は丈夫で、長期の使用を予定しており、より多くの船への導入を検討している」と話す。

 マースク・タンカーでも10%のコスト削減が見込める可能性があり、排ガス基準対応の助けにもなる。現在同社の燃料費は年間21億ドルに上り、実験の結果次第で中・長距離タンカー45隻への使用を検討する。決定は19年半ば以降になる見通し。

 燃料費の削減方法は他社も模索しており、穀物大手カーギルはばら積み貨物船に320平方メートルの凧(たこ)を使った。凧は独スカイセイルズ製で素材は人工繊維。マースクもローターのほか、船への物資運搬ではしけの代わりにドローンを使う実験や、船体の抵抗になる藻など微生物の付着を避けるため特殊塗料を塗るといった方法も試みている。