Wednesday, May 03, 2017 10:16 AM

加工食品のスペース縮小〜スーパー、食品大手は苦境に

 スーパーマーケット業界では、消費者の健康志向を受けて、新鮮な食品、温かいできたて食品、地元の新興企業の商品などにより多くの売り場スペースを割く店が増えており、場所を奪われた缶スープやシリアル、クッキーなどの加工食品を製造する食品大手が痛手を受けている。

■業績にも影響

 ウォールストリート・ジャーナルによると、ニュージャージーを拠点とするスーパーのショップライト(ShopRite)などは、一般的に売り場中央に置かれる加工食品の区画を縮小し、店内併設のレストランや客が持ち帰れる新鮮な食品の区画を広くした新しいタイプの店を全米に作っている。最近はドラッグストア・チェーンのCVSヘルスも、より健康的な商品を重視した店舗に更新すると発表しており、加工食品の棚スペースが全米規模で減る見通しとなっている。

 ニールセンによると、2017年1〜3期の加工食品販売量は前年同期比で2.4%減少。17年2月25日までの1年間では、加工食品と飲料の販売量は前期比0.4%減少した。これに対し、精肉は1.7%増、青果は1.9%増、惣菜は4%増加した。

 こうした傾向は、加工食品3大手のモンデリーズ・インターナショナル、クラフト・ハインツ、ケロッグの業績にも影響を与える見通しだ。RBCキャピタル・マーケッツのデイビッド・パルマー氏は「大手の販売量は6カ月にわたって落ち込みが加速しており、まだ回復は始まっていない」と話し、大手3社の業績予想を下方修正した。

■消費者傾向に店が追従

 消費者の間では、数年前からより新鮮で健康的な食品を好む傾向が強まっていたが、これを受けた最近の小売店の動きが食品大手に追い打ちをかけている。また、このところ食品価格は低下しており、肉や乳製品といった必需品の供給は過剰気味なため、消費者のスーパーでの支出が低下しており、加工食品より多少割高でも新鮮な食品は購入しやすくなっている。

 さらに、大手ブランドより安いストアブランドを買う人や、健康を重視した独特なブランドをオンライン購入する人も増えているため、食品大手の立場はますます弱くなっている。クッキーの「オレオ」、クラッカーの「リッツ」などを製造するモンデリーズ(Mondelez)は、17年の売り上げを前年比1%以上の増加と見込んでいたが、1〜3月期の業績が予想を下回れば年間売上高は減少する可能性もある。

 ユニリーバ(Unilever)やネスレ(Nestle)などは17年4月、「消費者がスーパーの中央売り場を避けているため、北米の食品販売は不振」と発表した。ケーキミックスの「ダンカン・ハインズ」などを販売するピナクル・フーズ(Pinnacle Foods)のCEOも「要因は1つではないが、今年は厳しい環境になる」と見ている。

 ウォルマート・ストアズのような小売り大手は、集客方法の1つとして大手食品ブランドに商品の値段を下げるよう圧力をかけており、ハーシーやペプシコなどは小売店と連携して独創的な戦略を検討しているという。

 一方、大手食品ブランドは経費削減と統合による利益率の改善を図っており、クラフトとハインツは2年前の合併で10億ドル以上の予算削減に成功した。クラフト・ハインツは17年、ユニリーバに1430億ドルの敵対的買収を仕掛けたが拒否されており、次はモンデリーズが買収ターゲットになるのではとの見方も出ている。