Monday, May 07, 2018 9:47 AM

海運業界への補助やめて〜マースク、各国政府に呼びかけ

 デンマークの海運大手A・P・モラー・マースクのソレン・スコウCEOは、業界全体のキャパシティ過剰と価格低下を引き起こしているとして、各国政府にコンテナ船会社への金銭的補助をやめるよう求めている。

 ウォールストリート・ジャーナルによると、スコウCEOは4月下旬、シンガポールで開かれた業界会合で「どの政府も不要なコンテナ輸送や造船に資金を浪費する必要はないと思う」と語った。A・P・モラー・マースクは、コンテナ海運で世界最大の輸送能力を持つマースク・ラインを運営しており、約2万個のコンテナを運べるいわゆるメガシップ導入の先駆者でもある。

 業界では中国国営の中国遠洋海運(コスコ)、韓国の現代商船、台湾の陽明海運などが、長年にわたって国からの有利な融資、公的資金を使った救済といった恩恵を受けている。ほかにも多くの政府が、造船業界の大量雇用を支える、輸出業者向けの輸送手段を提供する…といった広範な産業育成・貿易政策として業界を支援している。

 「私の考えでは、政府による海運投資にもはや戦略的なものなど存在しない」と話すスコウ氏は、特定の国を名指ししなかったが「造船会社が、収益の上がる経営方式を持たない赤字企業のために不必要な船を作っている」と指摘した。

 近年は主要路線で海運料金が大幅に低下しており、大規模な統合を生んだ最近の不況から立ち直ろうとする業界にも悪影響を与えている。最近のアジアから欧州向けコンテナ輸送料金は1個当たり約600ドルで、業界専門家が損益分岐点と見る1400ドルの半分にも達していない。業界幹部は、この路線の輸送能力は需要を20%上回っていると見ており、業界調査団体のアルファライナー(Alphaliner)は、2018年にコンテナ船の世界キャパシティは6%拡大し、予想される需要増加率(5.1%)を上回ると予想している。

 業界のキャパシティは00年代半ばに年2桁のペースで拡大し、08年末以降約2倍に増えている。スコウCEOは「非常に競合の激しい業界で、統合後もまだ10社以上の国際海運会社が、兄弟げんかのようにシェア争いを続けている」と話した。