Wednesday, June 29, 2022 6:34 AM
ハイテク業界、中絶規制州からのデータ提供要請を懸念
人工妊娠中絶を合衆国憲法上の権利として認めたロー対ウェイド裁判の判例を連邦最高裁が覆したことを受け、テクノロジー業界は今後中絶を問題視して捜査する法執行機関に妊娠関連データを提供しなければならなくなる状況を懸念している。
ロイター通信によると、今回の判決を受けて一部の州では中絶を規制する州法が施行されており、警察がテクノロジー利用者の検索履歴や位置情報、その他妊娠中絶の計画を示す情報に関する捜査令状を取る可能性が出てきた。検察も召喚状によって同じ情報にアクセスできる。
シリコンバレー企業の多くはこうした州法に反対しており、アルファベット傘下グーグル、フェイスブックの親会社メタ、アマゾンといった企業は、自らのデータ収集行為によって中絶希望者が有罪になり得る状況を懸念している。
フォード財団のテクノロジー研究員シンシア・コンティクック氏は「これらのハイテク企業が、顧客の検索履歴やウェブサイト閲覧に関する情報の提出を当局から求められることになる可能性は非常に高い」と見ている。
業界は長年、消費者の妊娠に関する機密情報を収集してきた。中絶反対派は2015年、いわゆるジオフェンシング(特定区域に進入すると自動的に機能が切り替わる)技術を使って地域内のスマートフォンを特定し、産科医療機関に入る個人を「妊娠の手助け」「あなたには選択肢がある」という広告の送信対象にした。
より最近では、スマホで妊娠3カ月目に中絶薬を検索したことが判明した母親が、ミシシッピ州検察当局に第2級殺人罪で起訴された。
強力な手がかりや証拠がない場合、捜査当局がハイテク企業に頼ることも十分にあり得る。例えば、19年の銀行強盗捜査では、警察がグーグルの位置情報データの令状を取得して容疑者を特定した。アマゾンは、20年6月までの3年間に、米国の顧客に関するデータを要求する捜査令状、召喚状、その他の裁判所命令の75%に少なくとも部分的に応じ、38%に対しては全面的に応じている。同社は「有効で拘束力のある命令には従わなければならない」と話しているが「法律が要求する最低限の内容を提供することにしている」という。
電子フロンティア財団のサイバーセキュリティーディレクター、エバ・ガルペリン氏は「かつて米国で中絶が違法だった時と今との違いは、私たちが前例のないデジタル監視時代に生きているということ 」と指摘した。