Tuesday, June 15, 2021 11:00 AM

「チップ詐欺のとびら」が開いた

 中国の武漢で2020年1月に始まった検疫と都市封鎖からパンデミックに発展したコーヴィッド19(COVID-19)は、さまざまの製品の需給関係と供給網を狂わした。その結果、チップ不足が世界規模で深刻化しただけでなく、チップ関連の詐欺行為を誘発させている。

 アース・テクニカ誌によると、電子製品独立販売業者協会(Independent Distributors of Electronics Association=IDEA)の創設者スティーヴ・カラーブリア氏は、世界的チップ不足について、「犯罪者たちが電子部品市場を食い物にするためにチップ詐欺のとびらを開くことになった」と指摘する。

 同氏によると、「チップ業界でまったく無名だった会社が、不足しているチップを大量に持っているという現象が表面化している」。犯罪集団らがまがい物や偽チップを大量生産して流通させようとしている兆候だ、と同氏は話している。

 電子機器の偽物はむかしからある問題だ。中国のイーコマース最大手アリババやアリエクスプレスでは、人気のある電子機器の偽物がむかしから大量に出回っている。

 しかし、チップの偽物はそれらの最終製品の偽物とは事情が違う。偽チップのメーカーや販売業者らは、消費者を標的とせず、チップ不足によって工場稼働停止の危機に直面している機器メーカーらを標的とする。

 最終製品の偽物をつくるより偽チップをつくるほうが圧倒的に楽だ。小さくて軽く簡単で安くできるためだ。

 チップのことをよく知る買い手なら、一見するだけで偽チップを見破ることができる。しかし、偽電子製品の調査会社CALCEの専門家ディガンタ・ダス氏によると、生産ラインを翌週も稼働し続けるために5000個のチップを必要とする工場の場合、「売り手の確認や検品といった本来の取り引き過程を飛び越して調達せざるを得ない」状態に追い込まれている。偽チップ業者らはそこにつけ込んでいる。

 電子部品卸業者AERIは、偽チップと本物を見分ける一つの対策として、くぼみの有無を確認するよう助言する。本物のチップには、複数の小さななくぼみが特定の場所にあるが、偽チップはそれを再現していない。偽チップの場合、生産過程でできるそれらのくぼみが研磨工程での粉塵でふさがれ、手抜きによってふさがれたまま出荷されるという。

https://arstechnica.com/gadgets/2021/06/chip-shortages-lead-to-more-counterfeit-chips-and-devices/