Monday, June 08, 2020 10:28 AM

AR技術の有用性、パンデミックで実証される

 新型コロナウイルス感染症のパンデミックが、拡張現実(AR)技術の有用性を証明しつつある。さまざまの業界の多くの会社は、過去数年にわたってAR技術の活用を試みてきた。これまでのおもな活用法には、車体の設計や製造工程の研修がある。

 ウォール・ストリート・ジャーナルによると、今回のパンデミックによる自宅勤務激増を受けて、技術支援や技術研修を遠隔から提供する必要性が高まったことから、AR技術の価値が認識されるようになっている。

 「革命的なツールだ。それを使えばもっと多くのことが可能になる」と、イスラエル拠点のシェバ・メディカル・センターの責任者アミタイ・ジブ氏は言う。同病院では3月以来、マイクロソフトのホロレンズ(HoloLens)2を活用し、約60人の医師や看護師、医療機器技師らに人工呼吸器の使い方を研修した。

 ホロレンズを使うと、ヘッドセット着用者は、現実の視界に浮かぶようなかたちでデジタル映像を見られる。その結果、別の病棟にいる医師はその映像を使うことで、患者の病床にいる技師への使い方説明を簡便化できる。

 同病院では、AR技術の活用をパンデミック前から模索していた。「今回の事態でその決定が再確認された。AR技術は医療現場にとって欠かせないツールだ」と、同病院のエヤル・ジムリクマン最高革新責任者は話す。

 マイクロソフトは、2020年1月以降、ホロレンズ2の利用が13倍に増加したと説明している。

 通信接続サービス大手のコックス・コミュニケーションでも、5000人以上の社員に対してARツールを3月に導入した。コックスが採用したのは、2ヵ所の遠隔場所間での動画逐次転送ソリューションを開発するヘルプ・ライトニング(Help Lightning)が提供するARソフトウェアだ。

 同ソフトウェアは、インターネット接続の設置手順において技術支援が必要な顧客がスマートフォンやタブレットから連絡してきた際に、眼前の状況をカメラでとらえてコックスの担当者に動画で示す。コックスの担当者はそれを受信すると、動画上の必要個所を丸で囲んだりすることで、顧客が接続すべき場所を明示できる。

 これまでは顧客の現場に赴いて提供していたサービスがパンデミックによる外出制限や感染回避対策によってできなくなったことから、そういったARソリューションが役に立っている。

https://www.wsj.com/articles/coronavirus-pandemic-brings-new-use-cases-for-augmented-reality-11590777284